「君たちの給料はお客の支払ったお金から出ている」
ホームセンター時代によく聞かされていました。この言葉。
どこの業界でも言われている言葉だと思うのですが。
この言葉は経営者的視点では正しいと思います。
顧客が自社のサービスや製品、商品を購入して支払いを行って、経営者または会社はそのお金を預かって一部は運転資金に、一部は内部留保に、一部は従業員の給料にと配分するわけです。
経営者からすれば川上の顧客からお金を預かって川下の労働者に給料を払ってやるという感覚でしょう。
したがって経営側が売り上げ、利益の源泉である顧客を大事にし、顧客満足を高める方策をいろいろ取り組むのはわかります。
ただ働いている従業員からすればこの言葉は腑に落ちないところも多いですよね。
自分たち一般従業員が働いているからこそ顧客はサービスを受けることができ、商品や製品を購入してその便宜に預かることができるわけです。
タマゴが先か、ニワトリが先かの問題でもあります。
「君たちの給料はお客の支払ったお金から出ている」
私はこの言葉大嫌いでしたね。
そんなこと言っているから私は会社勤めに向いていないのかもしれません。
サービス業従事者や多くの営業マン・ウーマンは直接的には顧客に対して働いているわけですが、それは会社のために働いているわけでもあり、労働の対価を会社が支払うのは当然だということになります。
もし経営層でない一般従業員で心の底から「私たちの給料はお客の支払ったお金から出ています」と考えている人がいたら、それは素晴らしい人格者だと思います。
神レベルですね。
私はとても真似ができません。
会社はこんな従業員は本当に大事にしないといけないでしょう。
いっぽう「君たちの給料はお客の支払ったお金から出ている」
この言葉を顧客側が言うとかなりそれは不遜な客ですよね。
でも本当にこの言葉を真に受けているバカがたまにいます。
実際、私が勤めていた店にもいました。
毎朝、店を訪れて「あんたたちの給料はおれたち客が払ってるんだぞ」と言いながら各売り場をまわっていくオヤジが。
でも、このオヤジ、私が勤めていた店の隣の市営住宅に住んでいる無職の生活保護受給者なのです。
別に生活保護受給者すべてを問題にするつもりは毛頭ありませんが、でもこのオヤジに対しては「お前の飯代は俺たちが払ってるんだぞ」とツッコミを返したくなります。
しかしそれができないのが小売業従業員のつらいところで、みんなこのクソおやじに対して顔を引きつらせながら、そうですね~と適当に相槌を打っていました。
まあ、こういうバカは実害はないのでまだいいのですが。
ただ「君たちの給料はお客の支払ったお金から出ている」という言葉だけが、社内で一方的に語られるのは違和感があります。
「客がサービスを受けられるのは労働者が働くからで、その対価を会社が支払うのは当然である」とセットで語られないとおかしくなります。
いいかげん、客>労働者という関係は終わらして欲しいですよね。
客=労働者、対等な関係でないと。
私が子供の頃はけっこう客と働く側が対等な関係だったと思います。商店街の店主と客のおばちゃんのようにお互いに尊敬し感謝しあう関係でした。この30年ほどの間で、どの業界でもどんどん客の方が持ち上げられモンスター化しているような気がします。
市場競争という名のもとのサービス合戦の成れの果てでしょうか。
一般論としてサービスを受ける側も、仕事ではサービス提供側に回ることが多いわけです。しかし本来なら相手の気持ちや事情もわかるはずなのですが、金を払うとなると途端に人格が変わる人が多いのもいかがなものかと。
たぶんそういう人たちは、普段の仕事で相当顧客から圧力を受けているのかもしれません。
一億総ストレス社会です。
人間はどこかで攻撃を受けると、どこか別の場所でそのストレスをなんらかの形で放出しないとバランスがとれません。
逆にそれができない優しい人はメンタルを壊しがちになるのではないかと。
わたしはまっぴらごめんです。
私の場合、攻撃されるとストレスが溜まって逆にその攻撃してくる客本人に向うであろうタイプですので、私は小売業従事者には向いていないと思っていました。(もちろん私個人、会社自体に少しでも非があればその限りではありません)
実際、もし客とけんかすると店や会社にもかなりの迷惑をかけてしまいます。
ただ働いていると想像を絶する客、理解不能、意味不明な客も多々いるものです。
そしてそういう客を接客し、ストレスを発散できないというのはかなりメンタルによろしくないのです。
メンタルだけではありません。わたしの場合、在職中は偏頭痛に悩まされていました。
会社を辞めた今でも私は時々過去のことを思い出して誰もいないところで壁を握りこぶしでドンドンとたたいたり、車を運転した時に車内で「ばかやろー〇△※!!」と叫んだりすることがあります。
心の傷のようなものでしょうか。
ということで私は15年ほど小売業界で勤めてきましたが、総括すると顧客のため会社のため十分頑張ってきたと思います。
ただこれ以上続けると人間不信に陥り一生後悔しそうな気がしたので、小売業・接客業の世界から足を洗うことにしました。
ただこういう業界で頑張っている人もいるので、そういう人たちにはほんとうに敬意を払います。