自分の心の中の誰にも言えないダークな部分が退職後スーッと消えた



勤めていたホームセンターをやめて3年4カ月、さすがにこれくらいたつと正社員時代の出来事はかなり昔のように感じる。

 

ホームセンターで働いている当時は数々のクレーマーの扱いに神経を擦り減らして、それにまつわる嫌な思い出も多々あった。そしてそれを思い出しては頭の中で事あるたびに反芻し、また嫌な気持ちになるという悪循環によく陥っていた。

 

それは通勤中も例外ではなかった。よく通勤の車の密室で「このクソじじい(ばばあ)!!ぶっ殺したる!」と大声で叫んでハンドルを叩いていた。もちろん実際に行動にうつすわけではないのだが、はたからみれば相当危ない人だったと思う。

 

さらには何か絶対にばれない仕返しはないだろうかと考えたことはよくある。

 

実際にやると犯罪になってしまうので行動には移さないが、相手が忘れたころに恐怖の呪いの手紙を送ってやるとか、頼んでもない宅配寿司を大量に送り付けてやるとか、夜中に庭に勝手に除草剤撒いてやるとか、玄関前に糞尿をまきちらすとか、車のマフラーにトイレットペーパー丸めて突っ込んでやるとか、車のドアのすきますべてにアロンアルファたらすとか、そんなことを想像して夜な夜な高ぶった気持ちを落ち着かせていたこともあった。

 

 

しかし退職後3年以上経過し、最近はそういう嫌なことを思い出すこともめっきり少なくなった。というかほぼ無い。今こうやって書いているから思い出すことはあるが、そうもしない限りは無い。

 

仮に会社を辞めていなければ、やはり同じ仕事を継続している限り、前の出来事は覚えているものだ。もちろんいろいろ覚えていたほうが次回に同様の事が起こったことに対して上手く対処できるというメリットはある。でも本当ならいやな事はすぐにでも頭の中から消し去りたい。

 

しかし重ねて言うが同じ仕事をしている限り、嫌な思い出は完全に頭の中から消し去ることはできないのだ。仮にそれさえ消し去ることのできるような輝かしい成功体験でもあれば別だが、毎日コツコツ仕事をしているホームセンターの店員なんかにそんな派手な成功体験はない。小さな成功体験はすぐ忘れるが、嫌な体験はずっとずっと心の中に暗い影を落とし続ける。仕事をやめない限り。

 

私が会社を辞めた大きな理由の一つに、定年の60歳までこの先10年以上もクレーマーたちと関わりたくないということがあった。とても無理だと思ったし、地球と月の距離くらい果てしなく無意味なことのように感じた。

 

 

それは今、会社を辞めてみて本当に正解だったと思う。嫌な人間と関わってもなんのメリットもない。こちらの心まですさんでくる。仕事だから仕方がない部分もあるが、それでも限界というものはある。私の場合は限界がたまたま46歳の時に来ただけだ。対人ストレスへの耐性も人それぞれだ。

 

他人から見れば逃避かもしれないが、自分の中ではそうは思っていない。むしろそこまで15年間よく耐えた、頑張ったと思う。誰一人自分と同じ体験を追体験するわけではないから、それは本人にしかわからないのだ。

 

いつも人間の嫌な部分を見ていて灰色だった私の心も、今ではすっかり青空のようになった感じがする。周りの景色もきれいに見えるし、日々の生活を楽しむ心の余裕もある。何より怒りという感情がそれほど出なくなってきた。

 

それが60歳までの安定した収入とボチボチの退職金と引き換えに、私が早期退職で得たもっとも素晴らしい何物にも代えがたいものだと思う。