ちょっと今日は最近気になったことを書きます。今回は私のブログ記事でもっとも長い記事かもしれません。
目次
ファクトフルネスとは
ちまたではファクトフルネスという考え方が流行っているらしいですね。提唱した人はTEDでプレゼンしているこの人、ハンス・ロスリング氏です。著書はビル・ゲイツやオバマ元米大統領からも絶賛されているそうです。
FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
- 作者:ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド
- 出版社/メーカー: 日経BP
- 発売日: 2019/01/11
- メディア: 単行本
ファクトフルネスとは――データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。賢い人ほどとらわれる10の思い込みから解放されれば、癒され、世界を正しく見るスキルが身につく。
世界を正しく見る、誰もが身につけておくべき習慣でありスキル、「ファクトフルネス」を解説しよう。
ーアマゾンによる紹介ー
TEDでの講演や氏の著作では、12の質問からいかに私たちが思い込みに支配されてこの世界を見ていることが紹介されています。それは専門家ほど、学歴が高く社会的地位が高い人ほどその思い込みにとらわれている傾向があるそうです。
12の質問 チンパンジークイズ
12の質問は以下のリンクから挑戦することができます。
https://factquiz.chibicode.com/
チンパンジーでも4問正解(ランダムに答えても正答率は3分の1)するのに対し、チンパンジー以下の正答率の人が続出するという質問です。
質問1: 現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
A:20% B:40% C:60%
質問2:世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
A:高所得国 B:中所得国 C:低所得国
こんな世界に関する3択の問題が並びます。
ちなみに私はおかげさまでチンパンジーに勝利! I am a human !
ははは、 私は頭が良くなく社会的地位も低いようです。
でもちょこちょこ海外旅行に行ったり、日常的にオンライン英会話でフィリピン人先生と話しているおかげで、多少はグローバルに物事を見れるようになっていたのでしょうか。英語の勉強の思わぬ副産物ですね。
それはさておき、ファクトフルネスによると私たちは本能的により危険なもの、悲惨なものに注意を向けがちで、思っているほど世の中はそんなに悪くないよということです。
とは言ってないかもしれませんが、ファクトフルネスは人々をミスリードしそうです。
テレビニュースは見ない方がいいのか
先日、勝間和代さんのYoutubeを見ていたら 、テレビのニュースはいっさい見ないようにしているとのこと。勝間さんもファクトフルネスの影響を受けているようです。
理由はテレビニュースがより危険で悲惨なものばかりを取り上げて偏向しているからとのことですね。事故や殺人、今だったらコロナウィルスだったりですかね。
まあ確かに誰かがちょっとした成功を収めただとか、困っていた人が助かったなどど前向きで幸せなニュースは報道されることはないです。
でもテレビを見なくてもネットニュースも同じようなもんだと個人的には思います。ネットニュースのニュースソースは大手テレビ局、新聞社だったり、時事通信、共同通信などネット民がバカにする大手マスゴミだったりします。
ニュースソースの一次情報に接することのできるメディアは限られていますからね。
個人的にはマスゴミという言葉を使っている人はマスコミをディスることにより、自分のほうが賢いとマウントとっているだけだと思っています。
話はそれましたが、情報はどこからとるという問題より、結局のところ受け手側の取捨選択の能力次第です。情報は多角的に集めることが重要です。
ファクトフルネスではテレビや新聞が世の中がまるで悪くなっているかのようなニュースを流してばかりといっても、報道機関は視聴者がリスクにあわないように警鐘をならす社会的使命もありますからね。
たとえば振り込め詐欺の被害がたびたび報道されても、まだ騙される人が多数います。もし報道されてなかったら、いったいどれだけの人が騙されている事でしょう。
メディアはただ視聴率のためだけにネガティブなニュースを流しているわけではないと思います。
たしかに一部のお年寄りのように朝から晩までニュースやワイドショーばかり見ていてはネガティブニュースに洗脳されてしまうと思いますが、悲しいニュースや悲惨なニュース、危機をあおるようなニュースからすべて目を背けようというのも「臭いものには蓋をしろ」と同じことだと思います。
ひいては自分の知りたくないことは私は知らない、関係ないからお好きにどうぞという風潮になりかねません。
考えてみるとこれまでテレビが貧困問題を報道してきたから、いろいろな援助が世界の最貧国に対して行われ、最貧困層の人たちが20年間で半分になったのかもしれません。戦争問題を報道してきたから戦争による死者の数が減ってきたのかもしれません。
人間のネガティブ本能がファクトフルネスでは偏見の元凶のように言われていますが、危機感がないと人は動きません。
ネガティブ本能にはいい面と悪い面があります。世界がお気楽主義のノーテンキな人ばかりというのも困りものです。
結局のところ
ファクトフルネスのチンパンジークイズにしても、わずか12の事例しか挙げていません。
そこでわかるのはあくまで「私たちが時に偏見にとらわれていることがある」というファクト(事実)だけです。
世界が本当に良くなっているか、悪くなっているかはたった12の事例で判断できるとは思えません。そしてそれを拡大解釈しすぎる人が多いような気がします。
こちらの書評は短絡すぎてちょっと怖いです。
一部引用いたします。
3. 本当は危険ではない
「世界は危険だ」というニュースが、毎日のように飛び交っています。私たちは、メディアからさまざまな情報を手に入れますが、メディアの目的は「注目を浴びる」ことです。滅多に起こらないことを報道したり、誰もが恐怖と感じるようなことを報道したりします。すると私たちの頭の中は、「滅多に起こらないこと」で埋め尽くされてしまうのです。これを「恐怖本能」といいます。
「恐怖本能」とは、人類が進化の過程で身につけた防衛本能のことで、人間にとって脅威と感じるものは、すぐに察知するようにできています。メディアはこの恐怖本能を利用することで、人々の関心を引きます。一方で現在の世界は人類史上まれにみる「平和な世の中」と著者はいいます。自然災害で亡くなる人の数は、100年前に比べて4分の1になったし、2016年の飛行機墜落事故は、4000万機のうちのたった10機のみでした。メディアはたったの0.000025%の事故を報道しています。このメディアの裏に隠れている事実をみることで、偏った情報を防ぐことができるのです
たしかに今は大規模な戦争もなく歴史上では平和な部類に入るかもしれません。しかしそれはなによりも第二次世界大戦を反省し、過去の先人たちが危機感のもとにいろいろ策を講じてきたからではないでしょうか。今でも地域レベルでは紛争も発生していまし、今後大規模な戦争が起きないという保証もありあません。
仮に世界が以前より確実に良くなっているというならば、それを実感できない人がなぜ世の中に多数いるのか? いまだに自殺する人が多くいるのは何故なのか? 残念ながらこの世の中は次から次へと新たな問題が発生しています。
頭がいい人たちや政治家たちが、このファクトフルネスという言葉を使って、さまざまな悪知恵を働かそうとするのではないかと少し心配になります。
マクロ的なデータを出して、個々の問題にフタをするのは政治家の常套手段です。
ファクトフルネスは権力者や資本家が一般市民を黙らせるのに都合のいい思想ですね。ビル・ゲイツが絶賛するのもわかるような気がします。
ファクトフルネスについてはオリラジの中田さんも絶賛していますが、私はあえて反対意見を書いてみました。
ファクトフルネスは多くの人が読むべき本だと思いますが、ハンス・ロスリングのいうようにこの本が「世界から絶賛されている」という偏見はかなぐり捨てて、ただ鵜呑みにするのではなくどの部分を取り入れることができるのか、よく考えながら読むべき本だと思います。