まーきちのお気楽生活

正社員からバイト暮らしを選んだ旅好きなおじさんの日記

ある和菓子職人さんの話

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ある町に昔ながらの和菓子屋さんがありました。

 

お店は古くからある住宅地の車のすれ違いも難しい路地沿いにあり、お客さんはほぼ地元の人でした。

 

細々と営業していましたが、この店の黒糖まんじゅうは素朴な甘さが美味しいと評判で、看板商品として地元ではそこそこ有名でした。

 

ご主人は70歳くらいで、とても人のよい真面目な方でした。

 

奥さんが主に店番に立ち、ご主人は早朝からお菓子を作っていました。店の建物はかなり古く、後継者はおらず、あと2〜3年で店を疂むのではないかと思われていました。

 

そんなある日、新聞の地方版にこのお店とご主人、看板商品の黒糖まんじゅうが掲載されることになりました。

 

地域の職人を紹介する特集記事でした。

 

掲載後、かなり反響があり、その日から店は一変しました。

 

黒糖まんじゅうを買い求める人が遠方からも押し寄せるようになったのです。

 

作っても作っても売れます。

 

売れる数も地元のお婆ちゃんが2〜3個買っていくのと違い、10個、20個と売れていきます。

 

在庫があるかどうか電話が頻繁にかかってくるようになりました。

 

黒糖まんじゅうは保存が効かないので作りだめもできず、毎日毎日作らないといけません。

 

売れるとさらに評判をよび、新たなお客さんが店を訪れるようになりました。

 

3台しかない店の駐車場はいつも車で埋まるようになりました。

 

真面目なご主人は、せっかく遠方から来たお客さんを品切れでがっかりさせないよう、それこそ連日寝る間も惜しんで黒糖まんじゅうを作り続けました。

 

いつかは落ち着くだろうと思って頑張って作り続けました。

 

そんな状況が2ヶ月ほど続きました。

 

ある日の朝です。

 

ご主人は黒糖まんじゅうを作っている最中に作業場で倒れました。

 

救急車で運ばれ病院で治療を受けましたが、意識の戻らないまま次の日に帰らぬ人となりました。

 

 

作り手のいないお店は閉めることとなりました。

 

二度とご主人の作る美味しい黒糖まんじゅうを食べることができなくなってしまいました。

 

地元の常連さんたちが特に落胆していたのでした。